渡辺正峯氏は、この本の中で全ての脳細胞をコンピュータチップに置きかえる事が可能だと論じているらしい。
段階的に移植していくとの構想であるが、まったくの絵空事である。
シンギュラリティを提唱したレイ・カーツアイルも同様の事を述べていたが、脳科学研究成果を無視した机上の空論である。
少しだけ例を挙げて反証してみたい。大脳前頭葉だけでも240億と言われるニューロンそれぞれには30000個から50000個のシナプスがあり、他のニューロンと連携している。このシナプスは毎秒0から5回、小胞体から3000個の伝達物質がやりとりされている。これによってニューロン間の伝達が起きたり、停止したりしている。
この状態をニューロチップに移行するとしたら、大脳前頭葉だけに限定しても 7.2 ✕ 1012 の状態を瞬時に移行する必要がある。さもないと、1秒経過すると最大で5倍の状態遷移が発生してしまう。
身体あるいは脳腸相関といわれている脊髄に沿って走っている神経細胞とのやりとりも、この大脳前頭葉に無関係ではない。むしろ、情動を創り出す源泉は身体の側からの信号によっている。
この信号のやりとりが一瞬でも途絶えたり、異なる信号となった場合時には生命維持に関わってくる。
これでは、最早「脳細胞の移行」と呼べる状態ではない。
人間の脳は毎秒10の20乗ビットの情報を受け取り、生涯で10の20ビットを脳に蓄積する
コレを提唱したノイマンの説を裏付けるために マイクロソフト研究所のゴードンベル氏が自ら計測可能なデバイスを身体にまとい生活してみたそうです。
その結果、情報を受け取るデバイスの性能の際は別としてほぼほぼ納得のいく値だったと言います。問題は、蓄積された情報力10の20ビットですが、ほぼ3TBということになります。
最近のHDDやSSDでも収録可能なデータ量のようです。
問題はダウンロード、アップロードの可能性です。これは、最初に述べたように不可能であると考えられます。生命体の脳は休むことがないので瞬間を写像として得ることは不可能だと思います。